どこにも行けない

結局どこにも行けない

ダッフルコートの行方

記憶にある中で一番古い洋服が真っ赤なダッフルコートだ。

冬になると着ていた真っ赤なダッフルコート。初めはぶかぶかだったのについに小さくなってしまって泣く泣く手放した。思えば幼い頃はかわいい服が大好きで、ピンクやフリフリの服ばかりだった。黒やグレーの服を着たくなくて箪笥の前で泣いて嫌がって母を困らせた記憶がある。今と正反対。小学校4年生のときにぶりっ子だと陰口を言われるまでは毎日スカートだったな。

その真っ赤なダッフルコートで水族館にも遊園地にも行った。いつだってその鮮やかな赤は気持ちを明るくしてくれた。もう着れないとわかったときは悲しかった。それからあのときの真っ赤なダッフルコートのようなものをなんとはなしに探してしまうくらい気に入っていた。

そうして幼い頃に別れたダッフルコートと再会を果たしたのは中学生のとき。中学校に入り、制服の上に着るコートとして選んだのはダッフルコートだった。規則で紺色の無難なダッフルコートになった記憶がある。とにかく重くて、しかもサイズも大きくて全く好きになれなかった。今思うとあれはあれで良かったんだけど、そのときの流行りはすっきりとした感じのコートだったからとにかく嫌だった。中学卒業と同時にそのダッフルコートは近所の誰かにあげた。

そうしている間にピーコートやらチェスターコートやらいろいろと着る日々。でも一昨年の冬に突然思ったんです。何年も着続けられるのはダッフルコートなんじゃないかって(多分そんなことはないんだろうけど)。そうして始まったダッフルコート探し。色からはじまって、とりあえず3年は着られそうかどうかとか・・・。いやいや、そもそもダッフルコートって何?ってなり、ダッフルコートについて調べる日々。どうでもいいんですけど、WikipediaのダッフルコートのページFranz Ferdinandのボーカルのアレックスの写真が使われていてウケます。結論としてはある程度ダッフルコートとしてのポイントは押さえつつ着やすいものになった。Gloverallとか欲しいなと思ったけど私にはまだ早い。実際にお店に足を運んで手触りや成分、着心地や着た時のシルエットとかいろいろ見比べていくうちに自分にとって大事なポイントが判明した。それは文庫本が入るサイズのポケットがついているかどうか。これすごく大事。学生のとき気になる人は冬になると茶色のダッフルコートのポケットから文庫本をひょいと取り出して読んでいたから。あれを真似したかった。それと単純に文庫本すぐ取り出せると時間を潰すのにいいからね。いくつかの候補の中からこれだと決めて年が明けてすぐに買いにいった。赤色ではなく紺色のダッフルコート。ダッフルコートと言えば赤でしょ!とどこかの雑誌に書いてあって、あまのじゃくが働いた結果だ。そして今の自分にとっては赤より紺だった。赤を着るには微妙な年齢すぎる。もう少し年を重ねてから着る赤のほうが魅力的だと思う。ちょうど30くらいになってからかな。買ったダッフルコートは紺色でポケットは文庫本が入るサイズ。ダッフルコートにしてはタイトな感じ。丈感はこのごろの私には珍しい膝よりちょい上丈。しっかりあたたかいので満足。今はこの紺色のタイトなダッフルコートに落ち着いたものの、今後買い直すときにどうなるかはわからない。そのときの自分にとってベストなダッフルコートを見つけていけたらいいね。