どこにも行けない

結局どこにも行けない

9/5 真説・月光密造の夜

新型コロナの影響で、延期になっていたスカートの日本橋三井ホールでの「真説・月光密造の夜」夜の部に行った。

新型コロナの影響でライブというものに行けなくなってから、初めての現場であった。入場の際のアルコール消毒、ドリンクはペットボトルで自分の好きなものをテーブルから一本取るという方式に、いろんな人が開催するためにいろいろ考えた結果がこのライブであるんだと思った。少し胸のあたりがキュッとなった。

 

ライブは最高。いつもは最後に演奏される「静かな夜がいい」が3曲目に!ハル→ゴウスツ→静かな夜がいいの流れで、それまであった、久しぶりのライブで生演奏で、楽しめるかとかそういった気持ちは吹っ飛んだ。今あるその目の前のバンドと音楽だけ。余計な考えなんて全部吹っ飛ばして、目の前の音楽とその世界にだけ気持ちが向かう、この瞬間がいつだって大好きだよ。

 

澤部氏のMCでもあったけれど、そこにあったはずの日常というものがなくなった。息苦しいと感じることもあるし、何よりも不安がある。それは未来に対するほの暗いどころじゃない暗く重たい不安で、春が来るたびに感じるお腹のあたりがぞわぞわする不安とはまた別物だ。胸に重くのしかかるもの。スカートの音楽には、それまであったはずの日常があって、そしてそれまであった気持ちを乱雑に扱わずに優しく抱きしめて、忘れることも忘れないこともどちらもいいんだと思わせてくれる。私はスカートの音楽の中にある日常というものを手放したくない。生活様式が変わっていったとしても。

過去のことまで全て正していこうとするような動きが多い中で、過去をそのまま抱きしめることは秘すべきもののように感じている。個人単位ですら、過去は恥じるものだという姿勢を見せなければならないように感じる今の時代に、スカートの音楽は過去をそっと抱きしめて、歩いていっていいんだと思わせてくれる。その音楽を目の前で見て、何も感じないわけないよ。

 

ライブが終わって、歩きたい気分になって日本橋から2駅分ほど歩いた。

目の前にある日常は、直線的で終わりへと猛スピードで進んでいくものだとしても、私はめぐってくる季節を感じて、毎年感じるその気持ちを全て抱きしめていきたいよ。